「に、兄さん! 不潔! 何やってるのよ!」

「不潔って何がだよ。今どういう状態なんだよ!」

「だ、だから喋るなぁ……う、動けないっ……」

「い、今の状況を説明してくれっ、詠歌!」

「せ、説明? い、今の状況って、え? ええ?」

「な、何がどうなってるんだよ、まったく見えないぞ、はぐっ」

「じょ、状況って……これ……どう説明したら……というかどう見ても……」

「ど、どう見ても何なんだよ!」

「えっと……いわゆる……し、しっくす……ないん?」

「しっくす? ないん?」

「……」

69?

アキハバラのアイドルグループの人数だっけ?

いや……あれはもう少し少なかった様な気がする……。

なんか聞き覚えがある。

なんというか、自分には無縁なものとして……ああ、世の中そんなものもあるんだね……的なぐらいな意識として……。

俺に無縁なもので……69。

69。

「シックスナインだと!?」

「そ、そうよ! 早くどいてよ!」

「わ、わかったっ」

「あ、あうっそんな場所つかまないでっ」

「わ、ごめんっ」

俺は上に乗っかっている涼の体を動かすために手近な場所を掴んだ。

弾力のあるそれがなんだかよく分からなかったが、触ってはいけないものであるのはたしかなのだろう。

「んじゃ……」

「きゃぅう!」

「な、何やってるの兄さん!」

「何やってるって……手で触らない様に起き上がろうと……」

「わ、わわ、わ……わ……」

「手使わないで顔そのまま持ち上げたら、大変な事になるに決まってるでしょ!」

「大変な事ってなんだよ!」

「兄さんの口の近くが涼さんのその……あの部分なんだから! 顔あげたら口が思いっきりつくでしょ!」

「口が思いっきり? なぁぁあああああ!?」

「きゃうぅ、し、しゃべらないで……ほ、本当に……せ、せめて顔をおろして……あうっ」


※サンプルシナリオは製品より一部抜粋編集してあります。ご了承下さい。